もっとも、飲料事業全体のうち、自販機事業は売り上げの大部分を占めているが、今回の撤退の対象にはなっていない。JTの飲料製品は、スーパーやコンビニなどの小売店と、自販機という、大きく分けて二つの販路で販売され、「圧倒的に自販機での売り上げが大きい」(JT)。自販機事業の中核子会社、ジャパンビバレッジホールディングスの直近の業績は、売上高1593億円、営業黒字28億円を確保(2014年3月期)。要は小売店向けの飲料が赤字の主因となっていた。
「規模の追求、体力勝負になった」
製販事業撤退の理由に関し、JTの大久保憲朗副社長は、「飲料業界全体が成熟し、事業規模が優劣を決する構造にある。規模の追求のために積極的な販促活動や新商品導入が必要となり、体力勝負の様相を呈している。今後、飲料の製造販売事業がJTグループの中長期的な成長に貢献していくことは困難と判断し、撤退を決定した」と説明する。
「桃の天然水」「Roots」といったブランドを、他社へ譲渡する可能性については、「検討していく」(大久保副社長)とした。ただ、「缶コーヒーやフレーバーウォーターのブランドをすでに持っているメーカーがほとんど。自社ブランドより販売数量の少ないブランドを買っても、資源を分散させるだけ」(他飲料メーカー)との冷ややかな見方もある。譲渡先を見つけられるかは不透明だ。
近年の飲料業界は、アサヒ飲料によるカルピス買収など、再編に伴う寡占化が進んでいる。飲料市場全体に占める上位5社の売上高比率は、1995年に61.6%だったが、2014年には同82.5%まで上昇した(飲料総研調べ)。加えて、大手小売業のPB(プライベートブランド)商品の登場もあり、強いブランド力を持たない業界下位メーカーは、小売店に商品を並べることも容易ではない。さらなる再編は必至と言われており、「候補となるのはダイドー、カゴメ、JT」(外資系証券アナリスト)といった声も出ていた。
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